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コラム

2022-12-04

人間関係

仏教の国からこんにちは| 03

前回は「不殺生戒(ふせっしょうかい)」について書かせていただきました、トランスジェンダー講談師・大学院生な痴山臣蔵でございます。

12月からはいよいよ「冬本番」と近所の整骨院で聞いてからちょっと構えておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?

初老の私は朝起きるとなぜか喉が痛いので、うがいばかりしております。

さて、今回も「素敵な人になる秘訣としての五戒(ごかい)」をツラツラと書かせていただきます。

五戒(不盗戒)オリジナリティで対人関係をよりスムーズに

前回と同じく、私たち仏教徒にある「五戒(ごかい)」

 「最低限、守ってね」というもので、2つ目が「不偸盗戒(ふちゅうとうかい)」なるものです。

 こちらは単に「盗みをしてはいけません」ということです。
 そんなことは知ってるよー。
 と皆さまの声が聞こえるのですが、「窃盗罪」や「著作権」に関わることなどについては当たり前なのです。

 ここからが「ちょっと工夫したら、アララ…素敵な人!」の魔法でございます。

 好きなパートナーとのデート。
 新しい出会いなどなど。

 ちょっと気合い入れなくちゃいけない時って、人生でありますよね。
 よく「出る杭は打たれる」ということを見聞きするのですが、それは中途半端に出ているから打たれるのです。結論から書くと、「思いっきり飛び出た杭は打つことすらできない」ので、とことん飛び出してみたら…何も起きないのです。
 そして人は古今東西、はるか昔から「異形のものを恐る」という本能を生物学的に持ちあわせているので、ちょっと一言、コミュニケーションを取れば…(皆さまが危惧するようなことは)起きにくくなるのです。

 ということで、ネットや雑誌などなどで、服装や化粧、その日の持ち物など皆さま「流行り」というものを気にして、それに合わせてその日のコーディネートなどをしているかと思います。もう半世紀近く生きていると、だんだんと分かってくるのですが、実はファッションなどは10〜30年ぐらいで1周して似たようなものが巡って来ます。

 別に服装や化粧、持ち物を盗んでいるわけではないのですが、1つアドバイスすると…。
 「流行りに流されるべからず」
 私は高校生の時のバイト代を貯めまくって購入した、重いダイバーズウォッチとソーラーで動く腕時計を愛用しています。普段はリンゴマーク社の腕時計で健康管理しているのですが、「ここで決めなくちゃ!」という時は、この学生時代に一目惚れした腕時計をつけて行くことにしています。

 ちなみに私はタバコを吸うのですが、30年近く使っているZippoを愛用しています。

 すると何が起きるかと言うと…
 「その腕時計オシャレですねー。今はみんなスマートウォッチだから…」(女性は特に見ている)
 「僕もZippoを昔使っていたんですよ。男は一度は憧れますよね」(男性はこういう強そうなアイテム好き)

 こちらから話題を出さなくても、相手から話題を出してくれます。
 もちろん私は18歳の頃からカミングアウトしているのですが、「腫れ物に触る」風でもなく、ただその製品から発生した話題で盛り上がって…あらら、誰も敵視しないし、皆さんが親近感を持ってくれる空気が出来上がります。

 最近ちょっと太ったので新しいスーツを購入したのですが、上司に当たるノーマル男性が「そのスーツで、いいよ!後はネクタイなんだけど…」とおもむろにネクタイの結び方のパンフレットや色んなネクタイのカタログを渡してくれます。
 「あ、ネクタイ何本もありますし、結べます!大丈夫です」
 「良かったー。ネクタイとか機会ないと結べないかもしれないから、僕がいない時はコレ見て…」
 性同一性障害のことは話さないけど、さり気なくフォローしてくれます。
 「何か逆に気を使わせてしまって、申し訳ないですね」
 「いいのよ。いいのよ。所長は心配性過ぎー!」
 新しい職場はいつも温かい空気で、私をフォローしてくれます。

 私はもう一つの仮面(講談師)があるので、着物を着ることも(一般の方より)多いと思います。
 もちろん長襦袢などは新しいものですが、それ以外は案外古い着物を仕立て直したものや草履や下駄などは、意外に家で眠っていた古いものをいただくことがあります。これもまた分かる人にはとても評判が良く、また周囲に可愛がってもらえる要因となります。

 意外に何か1つでも「こだわりの一品」を身につけてみるのもいいかもしれません。
 それは誰かのファッションを盗むのではなく、あなただけのオリジナリティで素敵に身につけたら、ちゃんと見ている人はあなたを見てくれています。

 昨今、ネットやニュースなど世間ではLGBTQのことをよく耳にします。
 皆さまよく思い出して欲しいのが、そんな話をする前に「私たちは同じ人間」なのです。
 ファッションもそうかもしれませんが、LGBTQなど人権に関わることについても、そこに書かれている(言われている)言葉だけを切り取って盗むかのようにして発言したりする前に…今日まで生きて来た年数分の自分が人間であることを認識し、相手も人間であることを見つめていくことがこれからも大切なのだと思います。

 私たちは仏教のある国に生まれました。仏教では戦う教えは存在しておりません。「素敵な人になる」の1つとして、世間に流されず、世間のそこだけの言葉を切り取らず(盗まず)、あなただけのこだわりを身につけて、素敵なファッションであなただけの人生を歩むことも誰もが始めれる秘訣です。

著者:痴山臣蔵(講談師・高野山大学大学院生・密教研究家)

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