生き方
仏教の国からこんにちは 04|

仏教にございます五戒、「不殺生戒(ふせっしょうかい)」・「不偸盗戒(ふちゅうとうかい)」と書かせていただきました。トランスジェンダー講談師・大学院生な痴山臣蔵でございます。
師走に入り、大阪も日が沈むと10℃を下回るようになりました。皆さま、お身体には気を付けて日々をお過ごしくださいませ。
さて、今回も「素敵な人になる秘訣としての五戒(ごかい)」をお話でございます。
五戒(不邪淫戒)と素敵な人になる秘訣
前回と同じく、私たち仏教徒にある「五戒(ごかい)」。
「最低限、守ってね」というもので、3つ目が「不邪淫戒(ふじゃいんかい)」と呼ばれるものです。
こちらは「不貞行為(不倫)を行ってはいけない」ということなのですが、これがなかなかな内容でございます。私が若い頃には、「失楽園」という小説で不倫をテーマにした、人間らしい愛憎がドラマや映画化されていたのを思い出します。
さて世界的に理解されているのは「淫らな男女の行いについて」なのですが、仏教的には結婚した男女における内容となってまいります。
お付き合いや結婚した当初は何もかもが新鮮で楽しいのですが、時間の経過や互いの関係が密になるほどのそれらは変化していくもの。時には互いと喧嘩したり、仕事や勉強でストレスが溜まったりした時に他の誰かに相談して…惹かれていくこと。
そして私たちの根幹にあるのは「生きること」です。
そこには生きることに必要な「三大欲」があります。食欲・性欲・睡眠欲です。詰まるところ、この三大欲に「節操や倫理観を持たせる」と書いた方が分かりやすいのかもしれません。
食欲旺盛までいいですが、度が過ぎてしまうと身体の健康を外します。睡眠欲も病気でない限りは、きちんと自分でコントロールして(その身体にとって)十分な休息を取っておかなければ、翌日のコンディションは最悪です。この二つの欲は、本当に私たち自身の肉体的生命に深く関わっているのです。しかしながら、性欲はこの私たち自身の肉体的生命に関わるのではなく、精神的部分や未来の子孫繁栄など、少し見えにくいことに関わっております。
ということを踏まえて、仏教・密教の世界でのこの「不邪淫戒」…。
今のパートナーと上手くいっていない、相手に飽きた、モテたい、モテ期、スリルや刺激などなどが原因。これは書き出すとよく分かるのですが「自分勝手」なことであり、まったく相手を思い遣っていないことが如実になってきます。
慈愛とは慈しみ、可愛がることです。
あなたのその行動は道徳的・倫理的・節操などという前に、あなた個人が相手に対して慈愛を持って行動しているのでしょうか。
恋愛や結婚だけでなく、どんなお付き合いであったとしても…。
特に恋愛や結婚という、より濃密な時間を過ごすパートナーにはよりそれが求められるのかもしれません。
たくさんの人に慕われる、愛される人の多くは、慈愛に満ちた方々が多いように思われます。慈愛を魂だけではなく、心や身体全体で感じてからその行動を考え直してからでも、遅くはないと思います。最初はたどたどしくても、素敵な人たちはそれを常に行動のいたるところで、惜しみなく出していることが多いのです。
著者:痴山臣蔵(講談師・高野山大学大学院生・密教研究家)