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コラム

2023-12-12

セクシュアリティ

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同性婚

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結婚

考え

ぼくらはたしかにここにいる

僕は女性として生まれ社会的には女性として生活していますが、できれば性別は感じたくないですし、好きな服は大体メンズ売り場にありますし、恋愛対象は女性という、いわゆるセクシュアルマイノリティです。

今でこそ自分のセクシュアリティも言葉で説明できるようになり、会社でもうまいこと配慮してもらっていますが、それでも「あ、いないことにされている」と感じる機会が多々あります。

僕はたしかにここにいるのに…

いないことにされる場面

「彼氏いる?」

あるあるですね。まあコロナ禍で飲み会も減り、セクハラに対する認識も変わり、聞かれることはさすがに減りましたが、こういった質問は嬉しくないです。

もちろん場面にもよりますが、誰しも恋愛をするという前提、女性は男性を好きになるという前提のもと聞いているのかもしれません。

でも恋愛をしない人だっているし、女性を好きな女性もいるのです。

「付き合っている人いる?」と性別を限定しない聞き方をするとか、そもそも恋愛の話をしないなどの配慮をする人が増えたらいいなと思います。

…ちなみに僕は恋バナ大好きです(誰得情報)

恋愛コラムは女性向けばかり?

恋バナが大好きな僕は惚れっぽく、(片想いを含め)恋愛する度に脈はあるか自分の恋愛傾向はどうかなどのコラムをよく読みます。例えば、

『恋愛 脈アリ 診断』

で調べると出てくるのは

「気になるを振り向かせるには?」

「これって脈アリ?異性の行動」

といった検索結果たち。僕の恋愛対象は女性なので「気になる彼」などできません。脈アリかどうか知りたいのは同性の行動です。仕方なく(女性が恋愛対象の)男性向けに書かれたコラムを読んでみますが、

異性として意識してもらえるようにしよう、男らしさをアピールしようといった内容ばかり…

僕は別に男性として見られたいわけでも男らしくなりたいわけでもないのに…

とある恋愛診断サイトには

「システムやデータ上『男性』と『女性』しか選べないので、自分の性格を知りたい場合は自認の性別を、恋愛関連の診断は恋愛対象と反対の性別を選んでください」

と注釈を入れてくれていて、ああ配慮されてると分かります。正直かなり救われます

異性愛前提の恋愛コラムや恋愛診断はたくさんあり、内容を修正するわけにも行かないでしょうし、コラムや診断自体に同性愛を否定する意図は無いこともわかります。だからこそ、とある恋愛診断サイトのような注釈を一言つけてもらえるだけでも救われるのです。

結婚という選択肢

パートナーができた時に浮かぶのが「結婚」という選択肢。もちろん結婚する/しないは個人の自由であるべきですが、お付き合いを経て結婚する方が多いのもまた事実です。

そんな時、少なくとも2023年11月現在の日本で、同性同士のカップルには「結婚」という選択肢がありません。『選ばない権利』という拙著コラムでも書きましたが、結婚を選ばないということもできないのです。

日本では同性婚訴訟も進んでいますが決してスムーズではなく、実際に制度として認められるのはいつになることやら…

便宜的に同性婚訴訟と言っていますがは「結婚の自由をすべての人に」と言っているように、「同性同士でも結婚できるように」したいだけであり、異性同士の結婚を禁ずる意図は一切ないし、結婚したいと思う2人に結婚という選択肢を!という内容のはずです。

同性婚が成立したからといって、結婚したくない人は結婚しなければいいし、異性同士で結婚したい人はすればいいし、結婚したいけどできなかった同性同士のカップルに「結婚」という選択肢が生まれるだけなのです。

同性婚が成立することで起こることはニュージーランドの元国会議員の方も解説してくださっています。

1000万回再生“同性婚スピーチ”のNZ元議員に聞く

上記の動画は界隈ではもう何度引用されているか分かりません。しかもこれ2013年の話。もう10年前ですよ!?(引用したTBSの動画は2021年にアップされたもの)

パートナーシップは?

パートナーシップ制度がよく取り沙汰されますが、日本のパートナーシップ制度は法的にはとても弱いです。

※出典:法律婚・事実婚(異性間)・同性カップルの比較(一部抜粋) MARRIAGE FOR ALL JAPAN 結婚の自由をすべての人に

「パートナーシップ制度があれば婚姻関係と同等と見なす」と決めているのは一部で、

会社は見なしてくれるけど病院では他人扱い、市役所では見なしてくれるけど不動産屋では他人(友人)扱い、といった対応もザラです。

そして何より、パートナーシップ制度がある地域と無い地域があります。生まれ育った土地で家族になりたいと思ってもパートナーシップ制度がある地域に引っ越さなければ権利を得られない。

婚姻関係はどうですか?国が2人は夫婦だと認め、会社も病院も市役所も不動産屋もその他の機関も法的に夫婦であると見なすのです。

これでもまだ「パートナーシップ制度があるなら同性婚できなくてもいいじゃん」と言えますか?

「悪気は無い」からこそすり減る心

ただ、セクシュアルマイノリティではない人には同性婚=パートナーシップ制度と思っている人が多いのも事実です。悪気無く言っているのも知っています。彼氏いる?と聞く人や恋愛コラムを書いた人、憲法を書いた人に悪気は無いのは分かっているんです。僕のようなマイノリティを想定していなかっただけ。でもだからこそ僕はそういった場面に何度も何度も出会っています。一度や二度なら受け流せることも数え切れないくらい遭遇したらもう嫌になります。嫌になりすぎて諦めて慣れてしまいました。でも変わらず心はすり減っていきます。

僕が初めて自分のセクシュアリティを自覚した頃はまだ、”オネエ”がテレビで笑い者にされるのが当たり前の世の中でした。初めて同性を好きになった僕はまるで罪を犯してしまったような罪悪感でいっぱいでした。自分はおかしいんだ、と苦しくて辛くて仕方がなかったです。それでも素敵な友人たちに恵まれ、優しい環境で過ごす経験をし、少しずつ少しずつ自分を受け入れていきました。

それでもぼくらは、ここにいる

レインボープライドは継続的に行われ、

同性婚訴訟も始まり、

TVドラマでも「きのう何食べた?」ではゲイカップルの日常を描き、「恋せぬふたり」ではアセクシュアルを取り上げ、「女子的生活」の主人公はトランスジェンダーの女性でレズビアン、などなどセクシュアルマイノリティを取り上げたものも増えたように感じます。

そうして社会の理解も徐々に進んでいくにつれ、ああ僕は何も悪くなかった。そう思えるようになってきました。僕もこの社会で生きていていいんだ。ここにいていいんだ。

この社会は普通の世界(ここでは異性愛主義とする)+マイノリティの世界という構造で成り立っているのではなく、ヘテロセクシュアルもストレートもレズビアンもゲイもトランスジェンダーもアセクシュアルもここに書ききれないたくさんのセクシュアリティも全部含めた、『私たち』の世界なのです。

僕は / 私はたしかに、ここにいる

みんながそう思える社会でありますように。切に願う啓なのでした。

著者:啓(けい)

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