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コラム

2023-05-20

思い

性自認

恋愛

考え

『好き』について

今回は僕の思う『好き』についてこれまで考えてきたことを振り返っていきたいと思います。

あくまでその時に僕が、相手が思っていたことであり、正しいとか間違ってるとかそういうことではなく、ただそういうことがあった、その時どう感じた、ただそれだけであることをご理解ください。

 多少感情に任せた部分がありますが、共感する人や、自分だけじゃないと安心する人が一人でもいればと思い、書いてみます。

高校時代の初恋へ「好きになってごめんね」

『好き』で困らせた

  自己紹介コラム「自分に正直でなくてもいいのかも」で少しだけ触れましたが、僕がセクシュアリティを自覚するきっかけになったのがこの初恋です。

高校の同級生のことを、同性なのに好きになってしまったのです。当時は自分が罪を犯したような気持ちでした。絶対にこの気持ちがバレてはいけない、でも好き、苦しい、とスクールカウンセラーにもかかっていて、とにかく苦しかったです。

  我慢に我慢を重ね、変に距離を置いて心配されたり、彼女に対して今までどう接していたか分からなくなったり、そんな苦しさに耐えきれなくなった僕はついに言ってしまいました。

好きだよ。

面と向かって言う勇気はなく、電話越しでした。

それでも彼女は僕のただならぬ雰囲気を感じ、「それは友だちとして?」と真剣な声で僕に聞きました。

「ううん。友だちとしてじゃない。ごめん。好きになってごめん。」

僕は謝りました。僕の『好き』が彼女を困らせている。言わなきゃいいのに、耐えかねて言ってしまった。ごめん。困らせてごめん。

謝らないでよ

彼女はそう言ってくれました。好きになってくれてありがとう、とも。僕は好きになった人が彼女で本当によかったと、当時はもちろん、今も思い出す度に思います。

  それからしばらくはやはりギクシャクし、そのままお互い高校を卒業。僕は地元を離れて大学生活を始めます。

僕が地元に帰省する度に会ってはいましたが、どことなく感じる気まずさ。それでも表面上はお互い”普通に”接していたのだと思います。

  紆余曲折あり今では一緒に出かけたり飲みに行ったり、なんだかんだでよき友人です。しかし告白前のような関係に戻ったわけではありません。2人とも時間をかけて”友人”という関係に辿り着いたのです。

大学時代の彼氏へ「好きになれなくてごめんね」

最初で最後の彼氏

  恋愛対象は女性だと言っておきながら、実は僕には彼氏がいました。大学の先輩です。

最初で最後の彼氏だと思っています。

先輩とは同じ授業を取っていたりして共通の知り合いも多く、男友達みたいな存在で一緒にいて楽しいし面白いし、お兄ちゃんができたような感覚でした。

  何度か2人でご飯に行き、僕も好意を寄せ彼の告白で付き合うことになりました。

嬉しかったと同時に、こんな僕で本当にいいの…?と不安になり、

今までに女の子を好きになったことがあるということ、性自認が女性ではなく女の子っぽい格好はできないこと、

そんなことを話しました。

彼はそれでもいいと言ってくれました。

  付き合っている間、僕は彼のことが好きだったし、彼も僕のことを好いてくれていました。実際のところは分からないけれど、少なくともそう感じられる関係だったと思います。

彼の『好き』に困る

  でもある時、(詳細は省きますが)僕は彼から性的対象に見られるのだと気付いた瞬間があり、とても怖くなりました。 怖いという表現が合っているのか分からないけれど、当時は何も知らなかったし未知のものに対して恐怖を抱いていただけかもしれません。でも、

僕はやはり男性とは付き合えない。

同じ好きを持てない。

そう、思ってしまったのです。

  僕は彼に言いました。あなたと同じ好きは持てない。多分この先もずっと。

  彼は本当に本当に“良い人”で、性的関係なんかなくていい、一緒にいたいと言ってくれました。本当に本当に優しい人で、僕が男性を好きになれたなら…!と思うほどには、関係を続けられなかったことを申し訳なく思います。

  今でも時々思い出しては、「好きになれなくてごめん」「どうか幸せでいて」と願うばかりです。

両思いだった親友から「告白するのはズルい」

自他共に認める相思相愛※付き合ってません

  親友とは、とあるコミュニティで出会い境遇も好きなことも似ていて、あっという間に仲良くなりました。コミュニティのみんなも、2人は本当に仲良いよね!と自他共に認めるペア?相棒?ニコイチだったのです。

  親友には僕のセクシュアリティを話していたし、僕の『好き』という気持ちを表現しても受け取ってくれていたし、同じように僕も彼女の『好き』を受け取り、大事にされているなと感じていました。

言葉にすると軽くなってしまいますが、“幸せ”でした。

  コミュニティを離れた後でも連絡を取り合い、事情を知る友人たちからは、まだ付き合ってないの!?と言われるほど相思相愛でした。

  いつものように電話で話をしていると、僕は電話越しの親友のことが愛しくてたまらない気持ちになりました。大好きで付き合いたくて、でも同時に親友が大事で親友の考えも知りたくて、告白ってどう思う?みたいなことを聞いてみました。

そして彼女から衝撃のひと言をもらいます。

「告白するのって、ズルいと思う。」

「これからの2人の関係性を、告白された側の返事で決めなきゃいけないから」

僕は衝撃でした。

好きになって、付き合いたいと思って、告白する/される

告白の後は付き合うか、振られる/振る

そうなるのが当たり前というか自然な流れだと思っていたからです。

  今思えば考え方の一つだと捉えられるのですが当時は、「告白ってどう思う?」というほぼ告白みたいな僕の勇気を「そんなズルいことしないで」と冷たくあしらわれたような気がしてなりませんでした。

  数ヶ月悩んだ挙句、これ以上曖昧な関係を続けたら僕の精神が持たないと思い、僕は”ズルいこと”をしました。これじゃ初恋の時と一緒じゃん。また僕の『好き』が人を困らせた。

  案の定関係はギクシャクし、徐々に連絡の頻度も下がり、親友とは疎遠になってしまいました。

大学時代のアイツから「君には自分より良い人がいるよ」

  実は親友との関係に悩んでいた時に相談に乗ってもらっていたのがコイツ。

時期的には告白して振られた?ギクシャクした?ずいぶん後になります。

  お互いの利害が一致し、期間限定で”恋人ごっこ”をしようということになりました。

  カフェへデートに行ったり、一緒に旅行したり、手を繋いで歩いたり、2人で料理をしたり、作った料理を一つの机で食べたり、一緒の布団で眠ったり。

期限付きの関係かつお互いの利益のため、というところからスタートしたので、付き合っていたかと聞かれると微妙ですが、ツレというか相棒というか、アイツは僕にとってだんだんと大事な存在になっていきました。

  そして最後の日。

おいおい泣いている僕を、アイツは至極冷静に送り出します。僕はアイツにとってだんだんと面倒な奴になっていたみたいです(自分で言ってて涙出てくる泣)

すでに僕に代わる同居人を見つけていたアイツは言いました。

「自分より啓に合う人がいるよ」

僕はお前がいいのに

僕は寂しい、お前がちっとも寂しくなさそうなのが一番寂しい

いっそ僕のことが嫌いになったとか言ってくれればいいのに

優しいあいつは、そうは言いませんでした。

  もともと終わりがあった僕らの恋人ごっこは、悲しいくらいに期限通りに幕を閉じました。

今 「好きにならないようにしよう」

∵片想い≒失恋

  そして今、僕は新しく知り合った人に対し、深入りしないように、友だちの範疇で収まるように、細心の注意を払っています。なぜなら大抵の場合、好きになったところで先がないからです。片想いと同時に失恋なのです。

  そして元彼の時に僕自身も経験したように、形の違う『好き』は時に人を困らせるからです。僕の『好き』は相手を困らせてしまうことが多いのです。

  だから僕は、仲良くなりたいと思った人には自分のセクシュアリティを事前に伝えることが多いです。それを知って嫌なら離れてほしいし、惚れっぽい自覚があるので(笑)「僕は女性を好きになりますので思わせぶりな態度はやめてください、好きになっちゃいます。」という思いも実はあったりします。

そうやって予防線を張って、『友だち』の範疇で収まるように必要以上に「好きにならないようにしよう」とあらゆる対策をしています。まあそれでも感情なんていちばん思い通りにいかないことなので、好きになってしまうこともあるのですが(笑)。相手にその気があると分からない限り、できるだけ表に出さないようにしています(顔や態度に出ているそうですが頑張ってます←)。

女子同士は恋愛に発展しない、という相手の前提を破らないようにしているのです。

たとえ相手が僕のセクシュアリティを知っていようと。

  そういうわけで、僕はまだ僕の『好き』をどう扱っていいのかわかりません。

相手の数だけ種類がある『好き』

  たくさん感じてきた色んな『好き』。きっと関係性の数だけ『好き』があって、それを友情か恋愛かの2択になんて出来なくて。

初恋相手に対する気持ちも、元彼の幸せを願う気持ちも、親友を想う気持ちも、あいつに抱いていた感情も、そのどれもが形の違う僕の『好き』。

  好きであること、好きでいること、そう思うことは自由なはずです。(どう表現するかが大事:詳しくは拙作コラム ”偏見”はあっていい

好きという気持ち、それ自体がダメなんてことはなくて。

君が好き。あなたが好き。

ただそれだけだから。

自分の『好き』を、もっともっと大切にしてあげなくちゃなと、”同性”に恋する啓は思うのでした。

著者:啓(けい)

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