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コラム

2023-03-03

同性婚

思い

結婚

考え

「選ばない」権利

  こんにちは、啓(けい)です。今回は『結婚』について思うことを綴っていきたいと思います。

『結婚しなくても幸せになれるこの時代に、

私は、あなたと結婚したいのです。』

  これは、結婚情報誌ゼクシィが2017年のCMで出したキャッチコピーです。(Yahoo!ニュース)

当時の反応は、結婚=幸せではないし、結婚したい人もしたくない人も誰も否定していないとして称賛の声が上がりました。当時の僕も、ゼクシィすごいな!よく言った!と思っていました(何様w)。

  あれから約6年。僕はこのキャッチコピーをふと思い出し、違和感を覚えたのです。

結婚ラッシュと結婚できない僕

  僕は女性として生まれ、女性として生活していて女性が恋愛対象です。大抵の女性の恋愛対象は男性。僕の恋愛は、片想いと同時に失恋するのが常でした。でもまあ正直慣れました。こんなことに慣れたくはないけど、数でいうと僕のほうがマイノリティなのは自明だからです。それでも僕は僕なりにいくつかの恋愛を経験してきました(両想いになれたのに付き合えない、付き合ったけどすぐ別れる、お互いに好きなのに好きだから一緒に居られない、などなど)。

  そして現在。僕は20代半ばで、年齢的にはいわゆる結婚適齢期というやつなのでしょうか?第一次の結婚ラッシュであることを思い知らされます。InstagramやYouTubeなどで僕と同世代の人たちが次々と結婚報告をしていったのです。1人2人ならまだしもギリギリ両手に収まるかどうか。「これが俗に言う結婚ラッシュか…」と嫌でも考えさせられました。でも女性が恋愛対象の僕には『結婚』という選択肢がありません。

僕はどうせ結婚できない。

  結婚報告は嬉しいしおめでたいのに、どこかそんな悲しい思いがありました。 

結婚できないという”普通”

  セクシュアリティを自覚した時から結婚はできないものだとして、それが僕の”普通”として過ごしてきました。結婚しない人もいるし、僕もその1人なだけだと思って過ごしてきました。…でも。

  この先素敵な人に出会って、付き合って、一緒に生きていきたいと思った時に、僕には『結婚』という選択肢が無い。しかもそれを当たり前だと思って生きてきた。結婚できないのが“普通”なんだと。でもちょっと待って?それってやっぱりおかしくない?

  友人たちの結婚報告を見て将来のことを考えた時に、考えられない。僕には先が無い。そんな感覚に陥りました。みんなが当たり前に選べるものが僕には最初から無いんだ。”選ばない”ことすらできない。

  正直なところ、日本で同性婚ができたとして、僕自身が結婚したいかどうかはよく分かりません。現在恋人がいないからというのもありますが、一番は考えてこなかった時間が長過ぎるから。僕にとって『結婚』とは、高校でセクシュアリティを自覚したその時からずっと、無理だと諦めていた選択肢。頭にちらつきもしなかった選択肢。意図的に考えなかった気もするし、そもそも結婚について考えることができなかった気もします。

結婚「しなくても」?

  ここで冒頭のキャッチコピーに戻ります。

『結婚しなくても幸せになれるこの時代に、

私は、あなたと結婚したいのです。』

  揚げ足取りみたいで申し訳ないのですが、「結婚しなくても」という表現は「結婚できるけどしない」という意味に思えてしまうのです。「結婚という選択肢があって、それを選ばずに幸せに暮らす人もいて、それでも結婚したい」そんな意味だと思ってしまうのです。

そこに僕は、同性を好きになる僕は、結婚できない僕は、想定されているのでしょうか?

※僕はこのキャッチコピーを批判しているのではなく、(発表されたのも6年も前のことですし)あくまで取っかかりとして引用しているだけであること、誤解無きよう…。

   2023年2月現在、日本では同性を好きになった場合、結婚できません。結婚「しない」のと「できない」のでは大きな差があります。僕は結婚を選「ば」ないのではありません。選「べ」ないのです。

(余談ですが、「同性を好きになるから付き合っても結婚できないんだよね」と言うと、「じゃあ同性婚できる海外に行けば?」とたまに言われます。それ、異性婚の人にも同じように言えますか?海外に行くしかなくて海外に行くのと、海外と日本と選択肢があった上で海外に行くのがどれだけ違うか、考えたことありますか?)

選ぶ権利=選ばない権利

  日本では同性婚訴訟(結婚の自由をすべての人に)が行われています。僕も何度か裁判の傍聴に行ったことがあります。結婚の『自由を』すべての人に、とあるようにこの訴訟は結婚を「選ぶ」権利のためだけではなく、それと同時に結婚を「選ばない」権利のためのものでもあると思うのです。

僕にもほしい、”選ばない権利“。

  結婚という選択肢について、僕だって異性婚の人たちと同じように考えて悩みたい。考えた上で、結婚するのかしないのか決めたい。第一次結婚ラッシュに翻弄される啓は思うのでした。

著者:啓(けい)

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